2017年8月21日

ITサービスサポート専業という事

ITというとその昔、クリエイティブな花形だったり、「デスマーチ」に代表されるブラック労働市場の典型だったり、そんなイメージが先行する業種なのだけど、ITの中でもITサポートに関していえば最近の学生さん達にはぶっちぎりに不人気な職種なのだそうだ。
私は、もちろんこの業種、やりがいもあると思うし、社会的に貢献できる良い仕事だと思っているのだけど、そもそもITでもサポート業界は認知されていなくって、更に開発側のシステムエンジニアやプログラマの過酷な労働がPRされまくってしまっていて、全体的に損している業界なんじゃないかなと感じている。
現在、IT系専門学校では、ゲーム開発ばかりを売りにしている。ゲーム大好きっ子はどの時代も一定の割合いるし、プレーヤーがクリエーターになり得るかどうかは横に置いとくとして、エンターテイメントは人を引き付けやすいのは間違いない。そして、黙っていても人材を確保できるゲーム業界は、ITの中でも群を抜いて過酷な労働条件だったりして、IT系開発業者もうちのがゲーム系の会社さんより条件良いのにな、と思っているのは間違いないと思う。
ゲームが採り、その他の開発が採り、その後に順番が回ってくるインフラ系の我々の業界。では、インフラサポートに分類される我々が開発系より過酷でないかと言われると、一点だけ過酷になり得るものがある。それは何かというと、「24365」と数字五つで並べられる24時間、365日保守だ。保守をやるとき、「SLA」と呼ばれるサービスレベルの合意がお客様と交わされる。障害が起こったら、お客さんと相談して日程調整しながら修理に行く日を決めるものから、駆け付け2時間復旧を求められる厳しいものまで様々だ。体制があればいいものの、場合によっては、一人で携帯を握りしめてシステムをおもりしている様な会社や保守員も珍しくない。いつ鳴り響くかわからない電話に怯え、プライベートの約束を交わす事も出来ず、飲酒も出来ず、遠くに出かける事も許されない。もちろん、電話に気が付かなくなるほど深く眠る事も許されない。そういう世界だ。
まぁ、そんなのを一人に押し付けちゃうのは続かないし、管理者や経営者は何しているんだという話になるので、ある程度の規模に会社になれば体制づくりに入るか、うちの様に厳しいSLAの仕事は請けるのを控える会社も多いのだけど、ビジネスチャンスと捉えて覚悟を決めて引き受ける個人事業主さんや赤字覚悟で体制作って引き受けてくれている大手保守会社の貢献のおかげで、社会の緊急保守は成り立っているところもある。
そういう厳しいのを除いて、ITサポートという事業を眺めてみると、お客様の感謝の気持ちを直接受け取る事ができるし、比較的予定も立ちやすいし、それほど精神的に追い込まれる事もなく、現場やお客様へのサービス向上に力を注いだり、新しい技術や知識に触れる機会も多くて成長を実感できる、良いお仕事だと思う。正直、もっと人気あっても良いのになと採用活動している時はいつも思う。私自身もたまに現場に立つことがあるけれど、サポートの現場は純粋に楽しいので、この仕事好きな人はきっともっとたくさんいるのだろう。
ITサポート専業って会社も沢山あるわけではないし、開発している会社がサポートしていたり、パソコンショップがサポートしていたり、配線施工系の会社さんがITもという事でサポートしていたり、それぞれでちょっとずつ特徴がある。うちがお世話になっているメーカーさんだったりプロバイダーさんだったり、携帯キャリアだったりするところも、ITサポートベンダーと呼ばれる当社の様な会社を掘り起こすのは結構大変で、全国均一のサービス品質を実現するためには超えないといけないハードルは結構高いと思う。
良く自社、自業種を振り返って、自分たちのサービスについて振り返ってみたりするのだけど、「サービス業」としてまだまだ成熟されてないと思う。接客する時のホスピタリティは観光フィールドで戦っているホテル等の足元にも及ばないし、飲食店に比べればマニュアル化も進んでいない。技術力にも人によって相当バラつきが大きいし、発注がかかって受注するまでのお客様側の負担もとても大きい。でも、それだけに改善する余地の大きな業種とみる事もできるし、他業種の常識的な取り組みを取り入れる事で自社のサービスをグッと引き上げて差別化の図れる、魅力的な市場と捉える事もできる。
今後もIotやらロボットやら可能性の多いお仕事だから、魅力を感じてドンドン参加してくれる企業や人が増えていくと良いと思う。