2005年2月2日

《源氏物語》

源氏物語には、「雲隠」という巻がある。
源氏物語の最も優れている作風はこの巻にあると私は思う。
桐壺から始まって源氏の華やいだ世界が永遠と続き、そして「雲隠」の巻を境にして宇治十条に入る。なんとこの巻はタイトルのみで本文が無い。その前の「幻」で紫の上を亡くした源氏の悲哀がかかれ、そして次の「匂宮」では8年の隔たりのみがあり、もはや源氏は過去の人となっている。
源氏の生死には触れず、後の人々の生活を何事も無かったかのように描く事により、この「雲隠」の意味が否応も無く重くなるのだ。
受験した頃以来久しぶりに読んだが、確かに面白い。名作である。