2005年10月17日

《複眼・視点》

ビジネスにおける懐の深さというものは、いかに多様な視点で物事を捉えられるか?一つの事象に対し複眼で原因を見る事ができるか?にかかっている。
今、労働市場は驚くほどに人材不足だ。大手ほどリストラを重ねて大切なノウハウや技術を失っている。最近では特に、技術者のいないSI企業からの仕事の発注も珍しくない。調整力も衰えておりスケジューリングも常にギリギリにしかできなくなってきている。当然、プログラム処理した方が効率的で早く、ミスも少ない事案でも、人海戦術になる。
当社の仕事はある意味、こうした事情を背景にして成り立っている。おそらく10年前には考えられなかった状況に違いない。だからこそ、発注段階の状況は粗い。テクニカルなサポートも期待できないし、スケジュールは見えない。
こうした状況の中で仕事を請ける我々の人材の品質は高い。いや、むしろこうした状況であっても自分の守備範囲をきっちり対応でき、かつクライアントの粗さも受け入れられる人材でなければ勤まらないのだ。そして我々の階層で働きうる人材も少ない。この業界の人材不足は、考えている以上に根が深いものだと思う。

2005年10月6日

《バー》

当社大阪オフィスから西に徒歩15分。1Km位の距離にあるマジックバー「Bar&Magic A-omoro」は、大学時代の友人がプロデュースするお店である。
当社が大阪オフィスにチャレンジするのと同時期の船出という事で、応援していきたいと思う。彼とは大学時代の本当にコアな部分を共有した仲間であり、マジックという分野で今も戦っている数少ない戦友でもある。私自身は企業経営という道を選んだが、あの頃の夢をきちんと形にして自分の道を往く彼の姿は本当に刺激になっている。
現在、西日本の仕事も大きく請けていて皆も大阪周辺に赴く事もあると思う。オフィスに行く機会があるときは、是非寄ってみて欲しい。

2005年10月1日

《サービスと目的》

9月末。当社の担当したお仕事で、とある官庁内での仕事があった。
某商社さんが請けている仕事で、パソコンのリースがこの半期で切れるための交換作業だったのだが、このサービスの品質がとてもよくない。
さて、ここでいう「サービス」というものを考えてみよう。
必達の目標としては、期限がある。リースが切れるという現実がある以上、また多くの企業が中間決算を迎えている以上、可能な限り速やかに全端末をエンドで使うユーザのもとに設置しなければならない。
そして次の目標としては、最低限「使える」状態で渡す必要がある。曰く、基本ソフトが立ち上がるか?ネットワークにつながるか?という部分である。
最後に、できれば行いたいのが、個々のユーザに対する配慮の部分のサービスであり、本来プロであればここまで気をつけたい。たとえば、部署ごとに違うプリンタを使えるようにセッティングする。または、メールなどの個人用設定をし使えるようにする。今までのPCからデータの移行をする。等だ。
エンドユーザ一人一人の事を考えるならば、事前の調整が欠かせない。期限が切られているのならば、少ない作業時間で効率的に作業しなければ細かい部分のサービスまで行き届かすことなどできないのだ。
そのためには、共通設定部分はなるべく現地入りする前の事前作業で完了している必要がある。現地で行う作業が多くなればなるほど、個別の部分でサービスはできなくなるからだ。
効率的に作業するためには、現地のお客様の協力も欠かせない。商品を一時置きできる場所や、LANに繋げて作業できるスペースがあれば、エンドユーザもとでの作業時間は更に少なくでき、お客さんの業務を止める時間が最小限にすむ。全ては調整なのだ。
そして、予定に無い追加作業を現地で請ける場合は、きちんと時間とコストの追加を明示するべきである。当然、イレギュラーケースも出る。
今回のケースはその全てが不足していた。まず、物流段階で半日の遅刻。遅刻の連絡もしなかったため、各部署での謝罪で現地で更に遅延。事前に連絡・調整していないため、商品を一時置きすることもできず、廊下に仮置き。見張りの為に作業員が一人拘束され更に遅延。設置してみるとネットワークにつながらない。事前作業のミスにより全ての端末作業が停止。一台確認をすると一台あたり20分程度の設定作業を行う必要があることが判明。現地での作業では期限内に終われないため、持ち帰って全台設定のやり直し。一日目はまるまる無駄になった。
二日目に二日間の業務を一日でやる必要に迫られる。現地で追加確認作業が発生。期限内に終わらせる事が難しいままそのまま見切り開始。現地でもお客様作業と作業員作業の区別が全く連絡されておらず、また、謝罪と個別作業のお断りで多くの時間が割かれ作業効率としては最悪の状態だった。
それでも全台ユーザの手元に届き、ネットワークにつながる「最低限」を仕上げる事ができたのは、同様の仕事の指揮経験が豊富な我々が実作業を行ったからだろう。手順書もチェックシートも無い状態で行った作業であるので、全ては作業員個人のスキルに託された。遅延や個別調整の不備に対する不満も作業員に集中したため、クレーム処理も作業員に託された。常に権限が制限されている我々の依頼元に対する「サービス」の中では最高のサービスを提供できたと思う。
しかし願わくば、当社を使っているメーカや商社という一次顧客のみではなく、使ってもらえるエンドユーザさんに満足していただけるそんなサービスを提供していきたい。

2005年9月25日

《立命館の試み》

私の出身大学は立命館大学であるが、立命館の試みは面白い。
私のコンピュータに関する基礎技術は大学のPCサポートを基盤としている。入学当時95年はインターネットが本格的に普及し始めたスタートとなる年で、WINDOWS95などのリリースもあり、学生の間でPCを持つ比率が飛躍的に高まった。立命館大学もいち早くインターネットの使えるPCの導入に踏み切り、またプロバイダとしても無料で自宅から接続できる環境を作った。そしてそのPCルームの管理や学生PCの接続サポート、更にはソフトの使用法やプログラムなどの授業の補助を、パソコンに詳しい学生に任せたのである。
私もコンピュータルームや図書室に常駐して使い方をアドバイスしたり、インターネットの使い方をアドバイスしたりしたものである。ワードエクセルやパスカルというプログラム言語の授業補助も行った。実際PC利用者の底上げにつながっていただろうし、我々のような実務経験を積めた人間にとってはありがたい試みだったと思う。
ベンチャー育成にも早くから積極的で、独立精神旺盛な学生を大量に排出している。以前紹介したドリコムなども在学中から話題になっていたし、うちの大口のクライアントの一つも立命出身のベンチャー社長である。
率直に愛校心などというとくすぐったい気もするが、卒業して数年たった今でもまだ現役在校生に知り合いがいる。この三連休に後輩と飲む機会があったのだが、そうした場所に呼んでもらえるのは嬉しいものだ。
来年は立命館もついに小学校を作るという。副校長に百マス計算などの「陰山メソッド」で有名な陰山英男教諭を招くという事だ。立命一流の話題づくりという側面ももちろんあるだろうが、小学校時代を陰山氏の教えの元で築ける意味は、学生にとって本当に大きなものになるだろう。なにより、確かな学力の支えを得る事により立命スピリッツは更に輝きを増すだろう。
さすが、我が母校である。

最近は、平常業務を皆が積極的に担当してくれているから、社長業の部分を行う事ができる。
タクティクスの権限を委譲したならば、遅々として改善されないでいるストラテジに取り組まなければならない。
黎明期ベンチャーでは、資金繰りといったような攻めの戦略についてももちろん弱いのだが、守りについては更に後手に回ってしまう。
守りの企業戦略とは、会社のカテゴリでは「労務」であろう。社会保険・厚生年金といった基本部分ですら、ベンチャーにとっては苦しい。ここの部分について歯を食いしばって頑張っていると、ついついそれより上を見る事が億劫になる。ある程度売上が確保できるようになった現在でも、リスク管理の為にコストをかけるのは、資金的に見ればやはり苦しい。しかしアクシデントとは機会を見てやってくる事は無いのだ。
忙しい事を理由にリスク管理を考えない、というのでは、経営者としては失格であろう。事実事業の拡大と共に、アクシデントによる何かしらの損失というものは現在増えてきつつある。大きな問題になった事例というのは無いが、考えられるリスクを挙げてみよう。
第一に、自動車関連のアクシデントだ。ぶつけた。動かなくなった。それ自体も仕事中に起これば問題であるし、さらにそのために怪我をしたり、仕事に穴が開いたりというのは、関係者全員にとってとてもつらい状況になる。
第二に、破損や情報漏えいによる賠償責任である。意図的でないにしても、うっかり設置中にパソコンを落としてしまったり、手順書を現地に置き忘れてしまったりという事が無いとも限らない。もちろんお客様との信頼関係でフォローする事がもっとも大切であるが、いざ損害を賠償するケースになった時に事前準備ができているのといないのとでは、リスク管理状況として大きく異なる。
第三に、業務上の怪我や事故に対する備えである。入院ともなれば費用も大きいし、機会損失も大きくなる。第一に挙げた自動車に限らず、業務上のリスクというのは仕事をする以上看過してはおけない。
ともあれ、「今まで上手くいっているから対策を考えない。」という事ではいけないということだ。細かいアクシデントで警笛が鳴っている今こそ、先手を打っていかなければならない。