2005年11月21日
一つの大きなお仕事が存在したとして、そこに関わってくる業者の数は発注者・受注者ともに考えている以上に多い。当社としては典型的な孫請・曾孫請会社だといえるのだが、世間で感じているような下請けの悲哀みたいなものの中で仕事をしているかといえばそんな事はない。
なぜならば当社のサービス品質は本当に高いと最高責任者である私が心から感じているからだ。ある仕事で、A社というお客様がB社というメーカーに発注したとしよう。B社は全国展開する能力のあるC社にこの仕事を委託する。C社はそれぞれの担当地域でもっとも信頼と実績のあるD社に委託する。D社はその期間仕事が請けられるE社を探す事になる。
我々はそのE社レベルの仕事をしている。
発注から実際の作業に入るまで、3・4社入るのはよくあることで、仕事をしていれば追加作業や変更事項がどんどん発生する。そうしていくうちに黒字と思われていたお仕事が赤字化するのだ。
さて、一旦赤字化したお仕事は、軒並み全社赤字になるか?と云われるとそんな事は無い。追加・変更を願い出たのはどこのレベルか?その時のコストはどこが負担するのか?を詰めていけば、B社とD社は赤字だがC社とE社は黒字である、といった縞々模様の状況が発生したりするものだ。
どこの会社も依頼して来た会社や自分が使っている下請けを真っ赤にしたくない気持ちはあってしかるべきだが、コスト意識も無くどんどん追加作業を委託していく場合には、整然と請求をあげる事にしている。クレームなどと共に降りてくる対策追加作業について、料金を請求するのは交渉を担当する営業現場としてはつらい。つらいが、自社よりも下に連なる会社やスタッフに迷惑をかけるのであれば、正々堂々と請求する事こそ正道であろう。
「人が動けば、金が動く。」この原則が理解できない会社には、きちんと責任を取ってもらわなければならない。そして、正当な要求をきちんと通すためには、きちんとしたサービスを自らが行っていく事に尽きる。当社はきちんと請求する。スタッフが動いているのに無給で働かせる事はありえないし、品質を担保するために一つ一つをきちんと黒字の案件とする。
当社の指揮下で働いてくれている会社にもスタッフにも迷惑をかけない会社でありたい。
そのために体を張って交渉するのが、社長の仕事である。
2005年11月1日
資本金1000万円。
ほんの少し前までの事だったが、株式会社設立のハードルは我々コネ無しカネ無しの青年には果てしなく高かった。大体普通にサラリーマンをやっていて、1000万円が自由に使えるようになるのはいったい何歳なんだろう。もしかすると一生そんな時期は来ないのかもしれない。だからこそ、「株式会社」の創業者というのは、これまで普通の感覚ではめぐり合えない人種だった。
現在の我々の状況は違う。なんと1円から株式会社を作ることが赦され、来年には「5年以内に1000万まで増資しなさい。」という特例扱いも無くなる。
私自身特例に乗って有限会社を設立し、一年と少しでノルマ300万(有限会社であれば300万)まで増資した。特例制度の利用者であるから、鉄の意志で300万の資本金を溜めて起業してきた先達に比べれば体制や準備に甘い点もあるかもしれないのだが、それでも「誰でも株式会社の社長になれます」という方針には賛成できない。
会社を経営しているものにとっては等しく感じているものに、取引先の信用リスクというものがある。BtoCのように原則即日現金取引であれば問題は無いが、法人同士の取引では売上と受渡には期間的にズレがあるのが一般的であるし、大きな金額になって支払ってもらえなければ一気に経営危機になる。未払いリスク程恐ろしいものはないのだ。
大企業であれば、取引先の財務状況などは当然把握しているし、信用リスクについても個別に調査できる。だが、我々のような中小企業には信用を計るためのコストはかけられない。そこで、大きく「会社形式」で見る事になるのだ。当社であっても可能な限り取引先は法人企業、できれば株式会社、可能であれば上場企業としたいと思っているし、私が起業した際に法人にこだわった主要因もこのあたりの信用にある。また、ホームページに財務諸表を載せているのもオープンに当社の信用を判断していただきたいからである。
さしあたり起業のハードルは低くして、努力しない企業は退場してもらうというこれまでの方針は制度の利用者である我々から見ても自然だったと思う。当社も株式会社に組織変更する事については前向きに考えていきたいが、可能な限り早い時期に資本金は1000万まで増資しなければならないと思っている。
それにしても。やはり1000万円のハードルは高い。先人達の努力には頭が下がる。
2005年10月17日
ビジネスにおける懐の深さというものは、いかに多様な視点で物事を捉えられるか?一つの事象に対し複眼で原因を見る事ができるか?にかかっている。
今、労働市場は驚くほどに人材不足だ。大手ほどリストラを重ねて大切なノウハウや技術を失っている。最近では特に、技術者のいないSI企業からの仕事の発注も珍しくない。調整力も衰えておりスケジューリングも常にギリギリにしかできなくなってきている。当然、プログラム処理した方が効率的で早く、ミスも少ない事案でも、人海戦術になる。
当社の仕事はある意味、こうした事情を背景にして成り立っている。おそらく10年前には考えられなかった状況に違いない。だからこそ、発注段階の状況は粗い。テクニカルなサポートも期待できないし、スケジュールは見えない。
こうした状況の中で仕事を請ける我々の人材の品質は高い。いや、むしろこうした状況であっても自分の守備範囲をきっちり対応でき、かつクライアントの粗さも受け入れられる人材でなければ勤まらないのだ。そして我々の階層で働きうる人材も少ない。この業界の人材不足は、考えている以上に根が深いものだと思う。
2005年10月6日
当社大阪オフィスから西に徒歩15分。1Km位の距離にあるマジックバー「Bar&Magic A-omoro」は、大学時代の友人がプロデュースするお店である。
当社が大阪オフィスにチャレンジするのと同時期の船出という事で、応援していきたいと思う。彼とは大学時代の本当にコアな部分を共有した仲間であり、マジックという分野で今も戦っている数少ない戦友でもある。私自身は企業経営という道を選んだが、あの頃の夢をきちんと形にして自分の道を往く彼の姿は本当に刺激になっている。
現在、西日本の仕事も大きく請けていて皆も大阪周辺に赴く事もあると思う。オフィスに行く機会があるときは、是非寄ってみて欲しい。
2005年10月1日
9月末。当社の担当したお仕事で、とある官庁内での仕事があった。
某商社さんが請けている仕事で、パソコンのリースがこの半期で切れるための交換作業だったのだが、このサービスの品質がとてもよくない。
さて、ここでいう「サービス」というものを考えてみよう。
必達の目標としては、期限がある。リースが切れるという現実がある以上、また多くの企業が中間決算を迎えている以上、可能な限り速やかに全端末をエンドで使うユーザのもとに設置しなければならない。
そして次の目標としては、最低限「使える」状態で渡す必要がある。曰く、基本ソフトが立ち上がるか?ネットワークにつながるか?という部分である。
最後に、できれば行いたいのが、個々のユーザに対する配慮の部分のサービスであり、本来プロであればここまで気をつけたい。たとえば、部署ごとに違うプリンタを使えるようにセッティングする。または、メールなどの個人用設定をし使えるようにする。今までのPCからデータの移行をする。等だ。
エンドユーザ一人一人の事を考えるならば、事前の調整が欠かせない。期限が切られているのならば、少ない作業時間で効率的に作業しなければ細かい部分のサービスまで行き届かすことなどできないのだ。
そのためには、共通設定部分はなるべく現地入りする前の事前作業で完了している必要がある。現地で行う作業が多くなればなるほど、個別の部分でサービスはできなくなるからだ。
効率的に作業するためには、現地のお客様の協力も欠かせない。商品を一時置きできる場所や、LANに繋げて作業できるスペースがあれば、エンドユーザもとでの作業時間は更に少なくでき、お客さんの業務を止める時間が最小限にすむ。全ては調整なのだ。
そして、予定に無い追加作業を現地で請ける場合は、きちんと時間とコストの追加を明示するべきである。当然、イレギュラーケースも出る。
今回のケースはその全てが不足していた。まず、物流段階で半日の遅刻。遅刻の連絡もしなかったため、各部署での謝罪で現地で更に遅延。事前に連絡・調整していないため、商品を一時置きすることもできず、廊下に仮置き。見張りの為に作業員が一人拘束され更に遅延。設置してみるとネットワークにつながらない。事前作業のミスにより全ての端末作業が停止。一台確認をすると一台あたり20分程度の設定作業を行う必要があることが判明。現地での作業では期限内に終われないため、持ち帰って全台設定のやり直し。一日目はまるまる無駄になった。
二日目に二日間の業務を一日でやる必要に迫られる。現地で追加確認作業が発生。期限内に終わらせる事が難しいままそのまま見切り開始。現地でもお客様作業と作業員作業の区別が全く連絡されておらず、また、謝罪と個別作業のお断りで多くの時間が割かれ作業効率としては最悪の状態だった。
それでも全台ユーザの手元に届き、ネットワークにつながる「最低限」を仕上げる事ができたのは、同様の仕事の指揮経験が豊富な我々が実作業を行ったからだろう。手順書もチェックシートも無い状態で行った作業であるので、全ては作業員個人のスキルに託された。遅延や個別調整の不備に対する不満も作業員に集中したため、クレーム処理も作業員に託された。常に権限が制限されている我々の依頼元に対する「サービス」の中では最高のサービスを提供できたと思う。
しかし願わくば、当社を使っているメーカや商社という一次顧客のみではなく、使ってもらえるエンドユーザさんに満足していただけるそんなサービスを提供していきたい。